機構の大学評価早わかり11 認証評価の訪問調査では何を行うのか?

機構の大学評価早わかり11 認証評価の訪問調査では何を行うのか?

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認証評価の訪問調査では何を行うのか?

認証評価では調査の一環として、評価対象大学のキャンパスを訪問して実地調査を行います。この実地調査は、法令(細目省令第1条第1項第4号)が求めるものです。当機構では、この実地調査を「訪問調査」と称して、評価部会が実施しています。さて、訪問調査では何が行われるのでしょうか。

訪問調査は書面調査と並んで、認証評価の実施にあたって重要な調査方法です。もちろん、教育の状況を1日や2日の訪問で調査し尽くすことは不可能ですので、書面調査では分析しきれなかった事実を確認するために、関係者と面談し、教育現場を視察し、学習環境の状況を補完的に調査することが最大の仕事です。

すでに書面調査が終了した時点で合議して決定した疑問点については、書面で大学に照会され、回答を得ています。それで、疑問点が解消されればそれでよいわけです。それでもなお残った、通常は数少ない疑問点について大学の関係者と面談することによって理解を共有することが最大の目的となります。

また、訪問調査においては、関係者の「生の声」を聞くことによって、分析の内容を深め、その内容の信頼性を高めることを目指します。たとえば、大学が取り組んでいる活動が、実際に学生から見てどのように受けとられているかは、自己評価書からだけからはなかなかわかりませんので、学生の声を聞く必要があります。また、大学が地域の人々や卒業(修了)者を雇用する企業、地方公共団体を念頭において実施している事業が、それらの人々にどのように受け取られているかも、やはり、直接に話を聞くことが必要なことがらです。この意味でとりわけ重要なのが学生との面談ですが、一方で、評価する側は、大学の提供する教育の受益者である学生の声を鵜呑みにし、評価結果に反映することもできません。学生の声の意見、観察についても大学に事実を確認してから、評価部会で検討することになります。

さらに、教育現場を視察し、学習環境の状況を調査することも訪問調査の重要な要素です。とくに、教室のなかで教員と学生との交流、学生間の交流を断片的であれ観察できることは評価に大きく寄与します。また、自習環境や図書館を見学することによって、大学が学生の生活と学習をどのように支援しているかということへの洞察を得ることができます。

訪問調査における重要な仕事は、対象大学を担当する委員の間での意見の共有です。その共有を通じて、ごくわずかな数の懸念点を残し、あるいはできればまったく懸念点を残さずに、対象大学における教育の状況に関する分析を確定し、評価の方向性を決め、評価部会に報告する評価結果の原案の大枠を構築するように努めます。

残念ながら、令和2年度以降の新型コロナウイルス感染症の拡大の状況の下では、広域にわたり移動が制限され、上述のような形での訪問調査を実施することが不可能になりました。しかし、デジタル技術の進歩によって、授業等の教育現場の視察については授業風景のビデオの提供、オンライン授業の遠隔での参加、学習支援施設の動画の紹介などによって代替することが可能となり、また、大学関係者との面談についても、ウェブ会議システムの活用により、その場で対面して行うのと同等の調査の実施が可能となりました。この経験を活かした調査方法の多様化が今後の課題となってきています。

以下には、新型コロナウイルス感染症蔓延以前に行われていた方式による日程表の例を示します。これはあくまで大学に対して最初に提示してきた例示であり、実際には、大学の時間割、教員、学生の都合に応じて柔軟な調整を行っています。しかし、どのように調整するにしても、また、訪問調査がオンライン化された年度においても、訪問調査における調査の内容に変わりはありません。