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認証評価の書面調査では何を行うのか?
認証評価は、大学から提出される自己点検・評価の結果の分析からはじまります。当機構が実施する認証評価では、この自己点検・評価の結果を「自己評価書」として大学が作成することを求めています。しかし考えてみれば、自己評価をもとにして認証評価を行うということは、入試で受験者が自分について自分で評価した結果をもとにして合否を決めるようなものにも思われるので、そのようなやり方で本当に客観的で公正な評価が行われ得るでしょうか。
客観的かつ公正な評価のために当機構が行っていることは以下のとおりです。
- 大学による自己評価が一定以上に信頼できるものであることを担保するために、当機構は『自己評価実施要項』を定め、必要な標準化のために記入様式等を整備すること。
- また、その『自己評価実施要項』が大学の状況に応じて適切に適用されるように、大学ごとに個別の研修を行うこと
書面調査は、そのような過程を経て作成された自己評価書を分析することによって実施します。
では、いったい何を分析するのでしょうか。分析の内容は以下のような事柄であり、その内容に則して項目を立て、大学による自己評価と当機構による認証評価が共通の認識の下で実施できるように配慮しています。
- 自己評価書における大学による分析結果の検証
- 自己評価書における大学による基準に関する自己判定の検証
- 自己評価書において大学が認める成果の判定
1.については、大学が自己評価書とともに提出する根拠資料・データを参照しながら、それらが大学による分析の結果を証拠立てるものとなっているかを確認します。そのことが確認できないときには、大学に対して説明あるいは追加資料の提出を求めます。2.については、大学のそれぞれの基準について示した判断、すなわち改善を要する点を認識したか否かについての当機構としての考え方を判断します。判断が相違した場合には、やはり、大学に説明を求める形で確認を求めます。さらに、3.については、大学がその成果の水準を具体的に示す根拠資料を参照しながら、評価部会としてもその成果の水準を適切に評価できるよう独自の調査を行います。その調査の結果として、大学に対して追加の説明を求める必要が認識されることもあります。
これらの分析は評価部会が行い、その結果を大学に確認を要する事項として連絡して、訪問調査に向けて回答を求めます。
もし自己評価書が完璧なものであれば、大学による分析をもって評価部会の分析とすることが可能ですが、実際には、たとえば、大学が根拠となると考えた資料やデータが大学の分析を立証するものではない、あるいは、大学としては当然として考えていることが、大学の経緯来歴を知らない学外の評価部会委員には理解できないなどの場合があるので、どうしても確認を要する事項は皆無にはなりません。しかし同時に、それらの理解できない点をすべて理解しないと大学の評価ができないかというと、そういうわけでもありません。認証評価においては、一定の基準を満たしているかどうかがもっとも重要な判断内容ですから、その判断に直接影響しないことについて大学に確認を求めることを避けるように努力しています。
なお、書面調査とはいっても、実際の評価部会の作業で紙の「書面」を扱うことはありません。大学は、所定のフォーマットの電子ファイルによって自己評価書を提出することになっています。自己評価書だけでなく、自己評価のために大学が分析に使用した根拠資料やデータも電子ファイルによって提出することになっています。また、「提出」するとはいっても、当機構事務局に「送付」するのではなく、当機構が契約するクラウドに大学がアップロードするだけです。書面調査の過程において、そしてそれ以降のすべての認証評価の作業において、評価部会の委員と当機構事務局の職員はクラウド上のファイルを使って作業することになります。このような電子化、オンライン化が平成31年(令和元年)度から実用化されていたために、書面調査や合議審議における新型コロナウイルス感染症の影響は最小限のものとすることできました。